んなあぁあああああるーこぉぉぉおおお!!!!!
お前宛てだわぁあああああ!!!
受け取って。
という名の押し付けです。
連続して、超絶私信ですみませんm(_ _)m
「あ、そういえば羽織にも荷物届いてたよ」
「え? 私に?」
「うん。不在通知が入ってたから、さっき連絡したの。だから、もうじきくるんじゃないかな?」
葉月と一緒に夕食の準備……というか、葉月が作ってくれたおかずをテーブルへ運んでいたら、カウンター越しに声がかかった。
私宛の荷物。うーん、誰からだろう?
なんて思っていたら、タイミングよくチャイムが響いた。
「はーい」
インターフォンで確認してから、鍵を開ける。
そこには、 いつもうちにお届けしてくれる宅急便のお姉さんーーと一緒に、なぜか絵里の姿があった。
「あれ!?」
「やっほー。なんかね、あーちゃんから連絡があったのよ。おもしろいものがあるから、羽織のとこ行ってって」
「えぇえ!?」
平日のこんな時間に絵里が来ることは、まずない。
あ、もしかして何か理由あるんじゃないの?
きっと、あーちゃんから連絡が行ったのもホントなんだろうけれど、改めて絵里の姿を確認すると、遊びに来ましたっていうよりは、まるで泊まりにきましたっていう荷物の……。
「絵里」
「わーおいしそう! え、なに、今日の夕飯豪華じゃない?」
「うわ、絵里ちゃん!? なんでここに!」
「ねえ、絵里ってば」
「絵里ちゃん、夕食食べてないの?」
「食べないで出てきちゃったのよね。ああ、でも気にしないで。そのパン屋で焼きそばメンチスペシャル買ってきたから」
「ねえ、絵里ってば!」
「んもー、何よぉ。羽織ってばうるさいわねー」
「うるさいじゃなくて! 田代先生と喧嘩したでしょ!」
「やぁね。いつものことじゃない」
「そーゆー問題じゃないでしょ!」
話を思いきりはぐらかしていた絵里の腕をつかみ、まっすぐ目を見ると、ばつが悪そうに唇を尖らせた。
ああ、居場所は田代先生なんとなく想像ついてるかな。
だとしても、時間も時間だし、連絡だけはしておこう。
「もー。今度は何で喧嘩したの?」
「喧嘩じゃないわよ失礼ね。……って何? それ。お荷物?」
「え? あ、うん。って……それは別によくて」
「あら。よくないわよ。いただきものは開封次第、即ご連絡あそばせ!」
「そうだけど……って、絵里! もぉ……」
ひらりと身をかわした絵里は、葉月に誘われるままダイニングテーブルについた。
どうやら、多めに作っていたらしく、新しく出たお皿に改めてサラダとエビフライ、ヒレカツが添えられる。
でもまぁ、たしかにお礼が先だよね。
「え、るーちゃんから?」
改めて荷物を見ると、いつもかわいいものを教えてくれるいとこの名前が。
ていうか、すごく近くに住んでるのに、宅急便で送ってくれるなんて。
なんだろう? この間も会ったばかりだけど、そのときは何も言ってなかった。
うーん。ちょっとだけ、開けるのドキドキ。
この間会ったとき、『羽織はなんだか色っぽくなったねー』って言われて、ちょっとどきっとしたんだよね。
当然、祐恭さんとのことも……話しちゃった。
だって、聞き出すの上手なんだもん。
恥ずかしかったけど、でも、よかったねって笑顔で言ってもらえて、すごく嬉しかった。
ああ、そういえばそのとき、オススメのものがあるから今度あげるって言ってくれたっけ。
「っわ、かわいい!」
箱を開けた瞬間、私もよく知ってるお店のロゴに頬が緩んだ。
この時期限定のハンドクリーム……と、香水?
「ん、いい香り……」
クレヨンタイプの、かわいらしいケース付きの香水だ。
わ、初めて見た!
それこそ、高校生だったときには、ちょっと大人っぽいなぁと思っていたブランドのものだけに、改めて、大学生になった今の自分はいわゆるオトナなんだなと思える。
えへへ、嬉しい。
「と、これはなんだろ……?」
「なになに? あら、かわいいじゃない。ここのハンドクリーム、どれもすごく使い勝手いいし、いい匂いよねー」
「あ、さくらなんだね。かわいい」
ハンドクリームセットとは別に入っていた、小さな箱を手に取ったら、絵里と葉月がすぐ隣にやってきた。
興味あるのは、当然だと思う。
私だって、気になるもん!
「っ……え、かわいい!!」
ころんとした、手のひらにすっぽり収まってしまうサイズの箱を開けたら、リングが入っていた。
でもでも、ただのリングじゃないの!
「メガネのリングなんて、初めて見た!」
見た目は、黒縁眼鏡。
でも、指にはめられるサイズで、作りがすごくかわいかった。
っていうか、こんな指輪もあるんだ!
一気にテンションが上がる。
「かわいいね、それ。リングになってるなんて、初めて見た」
「だよね! 私も!!」
ああ、もしかしなくても、るーちゃんは覚えててくれたんだ。
彼氏がメガネをかけていて、私より大人だってこと。
そしてそして、きっとこういうのを身につけていたら、喜んでくれるはずだってことも、わかってくれたのかもしれない。
「あら、それって……」
「かわいいよね、これ! すごいー! なんか、えへへ嬉しい」
改めて指にはめると、なんだか不思議な感じがした。
おもちゃみたいだけど、すごくしっかりした材質で、つくりで。
えへへ。祐恭さん、きっとこれ見たら喜んでくれるだろうなぁ。
なんて思いながら、絵里に指輪を見せると、まじまじそれを見つめてから手を叩いた。
「あのときのお客さん」
「え?」
「あー、あー、あー、なるほど。なるほどなるほど。わかったわ。ああー、そゆことね。なるほど」
「絵里……?」
「この指輪くれた人、あれでしょ? 胸がおっきくて、笑顔がかわいくて、そんでもって声がよく通るお姉さん」
「え……えええ!? 絵里っ……えぇ!?」
「わかったわ。あーなるほどね、繋がったわ。しかも、欲しいリアクションちゃんとしてくれる人でしょ?」
「えええ絵里!? え、なんで!? るーちゃん知ってるの!?」
「あぁ、るーちゃんていうの。なるほどね。次にお店来たら、声かけてみるわ」
「えぇぇええ!?」
さらりと言われたことに、頭がまったくついていかない。
え、え、どういうこと? ていうか、何? 何がおきてるの?
ふんふんとうなずきながら椅子へ戻った絵里は、黙々とごはんを食べてるお兄ちゃんの前に座ると、同じように箸を伸ばし始めた。
「絵里!?」
「詳しいことは、るーちゃんに聞いてほしいんだけど、まあ、ざっくり言うとアレよ。それ、私が売ったの」
「…………え?」
「だから、この間たまたま人手不足で手伝いに行った、おばあさまの会社系列のショップに、るーちゃんが来たってわけ」
「……えぇぇえええ!?」
お兄ちゃんと同じく、人に箸を向けながらしゃべる絵里を見つつ、それはそれは大きな声が出た。
事実。
お礼の電話をしながら、るーちゃんに絵里から聞いたことを伝えると、大爆笑されたあげく、そのときの絵里の破天荒な接客ぶりに、改めて驚くことになった。